GM破綻とオバマ政策
【6月5日】 GM破綻:/2 「国有化」大統領の賭け-米自動車大手ゼネラル・モーターズ(GM)の約270億ドルに上る債務削減交渉の最終期限まであと30分に迫った5月26日午後11時半(米国東部時間)。「交渉失敗。破綻(はたん)は不可避」の空気が市場に広がりつつあったその時刻、オバマ米大統領はネバダ州ラスベガスの名門ホテルにいた。「21世紀に対応した自動車産業の生き残り策を策定した。働く者の生活を守る。国民の税金を守る」と熱っぽく数百人の支持者に語りかけ、大きな拍手を浴びていた…毎日jp
6割超という高支持率が続くオバマ大統領は、選挙運動時と同様に、地方遊説やテレビなどで「国民のために自動車業界を支援する」と直接国民に訴え、政府支援への支持を求めてきた。 だが、オバマ大統領の本音は、同30日のテレビインタビューで漏らしたように「(GM再建に)本当は全く関与したくなかった」というものだった。
財務基盤が傷んだGMの再建には、計約500億ドル(約4兆8000億円)という膨大な税金を投入するほかなく、米政府は新生GMの株式の6割を取得する「国有化」に追い込まれた。建国以来「フロンティア・スピリッツ」を誇る米国では、政府主導の再建は、民間活力を重んじる国の基盤を揺るがしかねない。
「オバマ政権は国民の税金でギャンブルをやるつもりなのか」。オバマ大統領がネバダ州にとどまり、遊説を続けていた同27日、首都ワシントンの保守系ラジオ局WMALのキャスターは、政府主導のGM救済策をこう皮肉った。また、チェイニー前副大統領も同日夜、「オバマ大統領が今回の深刻な景気後退に乗じて政府と民間セクターとの関係を変えようと画策している」と現政権を批判した。
オバマ大統領は今月1日、GMの破産法申請直後の演説で「我々は控えめな株主になる」と経営への関与を否定した。しかし、「破綻前日の夜、デトロイト市長にGM本社を市外に移転しないことを確約する電話をかけていた」(米ウォールストリート・ジャーナル紙)との報道が流れた。さらに5月29日には、GMが低コストの中国やメキシコで生産して輸入する予定だった小型車を、閉鎖予定の米国工場で年間16万台生産すると決めるなど、地域経済や雇用確保などを名目とした経営への政治的関与が既に始まっている。国有化がGMが進めるリストラの足かせになる可能性も否定できない。
ヘリテージ財団のジェームス・ガットーゾ上級研究員は「消費者、納税者、自動車業界のいずれにとっても良くない選択が『国有化』だ。一刻も早くオバマ政権はGM民営化への出口戦略を示すべきだ」と指摘する。GM再建に失敗すれば、来秋の議会中間選挙に響き、「オバマ政権の命運を左右する事態になりかねない」(米ワシントン・ポスト紙)。
失敗が許されない賭けに出たオバマ政権。1日の会見で「GM車には米政府の保証がついている。安心して購入してほしい」と推奨する姿から、米国が保護主義にかじを切る可能性をかぎ取った関係者は多い。米国が保護主義に傾けば、世界不況はさらに長引く。
大統領就任から133日目で、巨大企業の破綻という節目を迎えたオバマ政権が、より高い再建という山をどう乗り越えるか。世界が注目している。
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【6月5日】 クローズアップ2009:GM破綻「国有化」(その1) 存続へ、非常手段 -毎日jp
クローズアップ2009:GM破綻「国有化」(その1) 存続へ、非常手段 <世の中ナビ NEWS NAVIGATOR>
◇窮状、自ら招く 既得権優先、政府支援頼み
米国産業の象徴だった米自動車最大手、ゼネラル・モーターズ(GM)が、経営破綻(はたん)した。過去の栄光を引きずり、退職者向け年金や医療保険の大盤振る舞いを続ける一方、売れる車作りを怠り、市場や消費者の変化についていけなかったGMが存続するには、国有化という非常手段しか残されていなかった。オバマ米大統領は政権の命運を懸けて再建を全面支援する構えだが、国丸抱えの「ガバメント(政府)・モーターズ」とやゆされるGM再建の道のりは険しい。【坂井隆之、斉藤望、小倉祥徳、ワシントン斉藤信宏】
「(GMの再建に)本当は全く関与したくなかったが、(支援しなければ)米経済にとって極めて重要な巨大企業が解体されることになってしまう」。オバマ米大統領はGM破綻を目前にした5月30日、米テレビのインタビューでこう述べ、一時国有化による再建支援の必要性を訴えた。裏を返せば、GMの解体・清算を回避するためには、国有化という手段しか残っていなかったということだ。
GM国有化という失敗が許されない未経験ゾーンに突入する際、米政府は慎重にシナリオを描いた。
「こんな債務削減策でまとまると思うのか」「破産法申請しかなくなるのではないか」。GMが債権者に示した債務削減策の同意期限を迎えた5月26日、ホワイトハウスの定例会見で記者からの厳しい質問に、ギブス大統領報道官は「再建策の(政府への)提出期限にはまだ時間がある」とかわした。だが、債権者に厳しく、労働組合に甘い内容の再建策が受け入れられる可能性がないことは米政府も分かっていた。案の定、計画は債権者の数%からしか賛同が得られず失敗。だがGMは2日後に、譲歩した内容の修正案を示し、今度は債権者の過半数から同意を得た。
修正案は米政府とGMが水面下で周到に準備していたとされる。当初の期限とされた3月末までにGMが再建計画をまとめられなかった際には、米政府は破綻の影響の大きさを測りかね、期限を延長するしかなかった。しかし、4月末のクライスラー破綻という“実験”が円滑に進んだことで自信を付け、今回は政府がブレーキを掛けながら、少しずつ市場に破綻の可能性を見せ、地ならしをした。今回の軟着陸破綻は「まさに政府のシナリオ通りだ」(米CNBCテレビ)との見方が大勢だ。
そもそも国有化が避けられないほど経営が傷んだ要因はGM自身にあった。GMは抜本的なリストラを先送りしてきた。年金や医療保険などを含めると、組み立て工場の労働者の実質的な時給が73ドルと日系自動車メーカーの2倍近くにも上ることを指摘された労組も、既得権の保護と政府の支援頼みの姿勢を続けてきた。
GMは07年後半以降、原油高騰で主力の大型車の販売が落ち込むと、大幅な値引きや傘下の金融会社を使ったゼロ金利ローンでの販売に手を染めたが、それは採算無視の戦略だった。傷口は広がり、出血はもはや止めることができず、国有化で政府に救済してもらうしかなかった。
◇再建、険しい道 小型・環境車、出遅れ
米政府がGMの連邦破産法11条の申請と事実上の国有化を発表した5月31日、米政府高官は「新しいGMが始まる米自動車業界に歴史的な日になる」と再建への期待をアピールした。
破産法申請後の新生GMは債務を減らし、工場閉鎖や人員削減で事業規模は従来の6割程度になる。債権者の過半やUAWの同意も取り付けた上での「事前調整型」破綻の形ができたことで、米政府は「60〜90日」で破産手続きを終える再建シナリオを描く。米政府が拠出する301億ドルの資金も活用し、小型車やエコカー(環境適応車)開発を推進し、世界的な競争力を持たせる計画だ。
しかし、シナリオが絵に描いた餅になる懸念は消えない。「破綻によるブランド力の失墜で、GMユーザーの多くは日本車か、ビッグ3で生き残ったフォードに流れる」(日系メーカー幹部)との見方がある。信頼回復や魅力的な新車が無ければ、今年1〜4月の新車販売が前年同期比45%も落ち込んだGMの販売回復は見込めない。
また、国有化されたGMに対して、米議会や主要株主となるUAWから雇用維持を求める圧力がかかり、リストラが中途半端に終わる懸念もある。実際、GMはUAWから労務費削減の合意を取り付けるために、工場閉鎖計画を一部変更し、国内での小型車生産を決めるなどその兆候も出ている。 企業風土が刷新できるかも課題だ。
かつて日本車への対抗策と鳴り物入りで開発した戦略小型車「サターン」(90年発売)の挫折や、96年に実用化しながらわずか4年で生産を打ち切った電気自動車「EV1」に象徴されるように「新車開発はできても、性能を改善し、ヒット車につなげる現場力が乏しい」(日本の業界筋)のは不安要因だ。
米政府は新生GMの役員として、破綻した大手スーパー、Kマートの再建などで実績のあるコッチ氏を派遣する方針だ。政府は「新車開発や生産・販売計画などには関与しない」(サマーズ米大統領補佐官)とするが、肝心の「売れる車」作りができるのか。再生の道筋は見えない。
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